「Myfxbookの信頼性も絶対ではない」ということを、ご存知だろうか。
結論から言えば、EAの開発者とFX会社とが裏で結託すれば、Myfxbookからの正式な認証を受けつつ、捏造した成績データを「実際の取引での成績」として公開することも、“理論上は” 可能となるのだ。
「レビューの中でMyfxbookの成績データを引用しまくっている奴が、藪から棒に何を言い出すのか」と思われるかもしれないが、まずは何も言わずに話に耳を傾けてほしい。
まず、Myfxbookの仕様についての話をしたい。
基礎知識として、同サイト上に公開されているデータはすべて、アカウント開設者のMetaTrader(MT)上に記録された取引履歴を、そっくりそのままコピーしたものとなる。
そして、Myfxbookでは、改ざんや不正行為を防止し、データの正当性と信頼性を担保する手段として独自の認証システムを採用しているのだが、ここに不正を働く余地が残されているのだ。
Myfxbookが過去に明かしたところによると、この認証システムは、「Myfxbook上に登録された成績データと、FX会社によって提出された当該口座の取引履歴データとを照合し、両者の間に何らかの齟齬が生じていないかどうかを調べるだけ」とのこと。
要するに、この認証システムは、「FX会社によって提出されたデータは常に正しい」という前提の上に成り立っていることになる。
ここで話は、冒頭の前置きにまで戻る。
つまりEA開発者が、シミュレーターか何かを利用して作成した「架空の取引履歴データ」 を、結託したFX会社が何らかの方法で「実際の取引履歴データ」として口座の取引履歴に記録してしまえば、Myfxbookは、その架空のデータを「本物」だと認識せざるを得ないという訳だ。
ここに、「Myfxbookの信頼性も絶対ではない」と主張する根拠がある。
そうは言っても、「実際にそのようなことが可能なのか疑わしい」という意見もあるだろう。
そこで、以下にその実例を用意した。『Swing Trader PRO』というEAが公開している成績データを紐解いていきたいと思う。
美しい右肩上がりの資産曲線と驚異的な利益率に目を奪われ、思わず魅了されてしまった人もいるかもしれないが、画像左側にある「ドローダウン(Drawdown)」の項目に着目すれば、この成績データの “異常さ” に気が付き、その熱も一瞬で冷めることだろう。
そう、最大ドローダウンが「100%」に達しているのだ。しかも、100%に達したとされる日の前後の取引履歴を見ても、強制的にロスカットが執行された様子も、追加で証拠金を預け入れた様子も一切見受けられない。
にもかかわらず、口座が破綻せず、EAの運用が終了されるまで、変わらず順調に右肩上がりの資産曲線を描き続けているのは、一体どういった仕組みなのだろうか。
なお、これは余談だが、一般的にFXにおいてドローダウンを算出する際には、以下の2パターンのどちらかが計算の基準として用いられる。
ドローダウン計算方法の基準
- 「証拠金の過去最大額」と「証拠金の現在額」との落差
- 「証拠金」と「有効証拠金」との落差
計算に用いる要素こそ異なるものの、要するにどちらのパターンも、「運用期間中に、証拠金が最大額からどれだけ目減りしたことがあるか」を示すという点で、何ら違いはない。
大半の場合において、①の方が基準に据えられるのだが、調べた限りでは、Myfxbookは②の方を基準としてドローダウンを算出しているようだった。
本題に戻るが、当然、どちらの基準で計算されていようが、最大ドローダウンが100%に達してしまえば、間違いなくその口座は破綻することになるため、今回の話題において、Myfxbookがどちらの基準を採用しているかは、さして重要な問題ではない。
真に重要なのは、この成績データに「捏造された痕跡と証拠」が幾つも見られるという事実の方だ。
徹底的なデータの分析が主題ではないので、痕跡や証拠について一つ一つ詳細に検証することはしないが、簡潔にまとめると、以下のようになる。
① 実際のドローダウンと異なる値が表示されていた
上の画像は、以前Myfxbook上に公開されていた成績データの矛盾に気が付いた有志が、『Swing Trader Pro』の開発者を問いただす目的で作成した画像だ。
取引履歴には、2015年5月18日に最大ドローダウンが約「85%」にまで膨らんだことが確認できるにもかかわらず、実際の成績としては「21.71%」という数字が表示されている様子が見て取れる。
② 100%を超えるドローダウンを記録していた
また、現在の公開データでは、2015年4月28日と2015年5月6日の両日にドローダウンが100%に達したことになっているが、過去に公開されていたデータにおいては、少なくとも4月28日には「144%」を記録していたことが、複数の有志による証言から判明している。
にもかかわらず、やはり当時は「21.71%」と表示されていたのだが、既に現在のデータ上では、100%と表示されるように “調整” されてしまっている。
③ 現行データにも不審な点が残されている
さらに嘆かわしいことには、現行データのどこをどう計算しても、最大ドローダウンの数字として「100%」という値を導き出すことはできない。
なお、『Swing Trader PRO』の生みの親であるDoug Price氏は、「SCAM(詐欺商材)」を量産する開発者として、海外では悪名高い。
これだけ露骨に不正の痕跡が残されるケースは間違いなく稀だろうし、全体の割合から見ればが、世の中に溢れる悪質なEAの中には、同様の手口でトレーダーの目を欺こうとしている製品も、多かれ少なかれ存在していることだろう。
上に、『Swing Trader PRO』が実際に公開している成績データを掲載しておくので、気になる人は直接自分の目で確かめてみてほしい。
ともあれ、そういった悪意ある連中の存在を考慮に入れたとしても、もちろん「Myfxbookの信頼性は高い」という大前提が揺らぐことはない。
しかしながら、Myfxbook上に公開されている成績データを盲目的に信用し、そのままEAの信頼性についても妄信してしまう姿勢については、危険だと言わざるを得ない。
口コミやレビューによる評価、公式サイト上で明らかにされている情報、一般のトレーダーが公開している成績、開発者が過去に発売した姉妹EAの実績、利用しているFX会社の信頼性など、多角的な観点からEAを評価することが、やはり大切だと言える。
そういった “身辺調査” をきちんと行った上で利用したならば、Myfxbookという存在は、真に実力のあるEAを見定めるための有用なツールとして、大いに活躍してくれることだろう。
疑い深い性格も一般社会ではあまり美徳とされないが、悪辣な詐欺行為が横行するFXの世界においては、きっと「旨い話は常に疑ってかかる」くらいの姿勢でちょうど良いに違いない。
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