『FXStabilizer』評価
収益性:(5.0)
安定性:(2.0)
信頼性:(1.0)
総合評価
(1.0)※※SCAM警報※※
『FXStabiizer』基本情報
- 【取引通貨ペア】: 2種類
対応している通貨ペア
● ユーロ/米ドル(EURUSD)
● 豪ドル/米ドル(AUDUSD)
- 【スタイル】: デイトレード ~ スイングトレード
- 【販売価格】: 265 ~ 375ドル(最大30日間の返金保証サービスあり)
世に存在するEAの多くが、最低でも数種類以上の通貨ペアでの取引に対応する中、この『FXStabilizer』は、珍しく1つの通貨ペアにしか対応していない。
厳密に言えば、『FXStabilizer』には2種類のパッケージが存在するため、シリーズ全体としては2種類の通貨ペアに対応していることになるが、それぞれのパッケージは、「豪ドル/米ドル」または「ユーロ/米ドル」どちらか一方の通貨ペアでの取引にしか対応しない。
それ自体は、「特定の通貨ペアでの取引に特化している」とも取れるため、「EAの個性」という評価の範疇に収まるものだとは言える。明らかな減点要素でもないが、決して加点要素でもない。
ただし、日本国内でも人気の高い「米ドル/円」での取引に対応していないことを残念に思う人は、少なくないだろう。
各パッケージの特徴を、以下に簡単にまとめてみた。
各プランの特徴
両方のパッケージを同時に購入した場合、通常価格のおよそ30%引きとなる375ドルという優待価格が適用される。
また、どちらを購入した場合でも、“friendly support(親切なサポート)” をいつでも受けられるとのことだが、ユーザーからのレビューや評価などを見る限りでは、サポートチームの対応はお世辞にも親切だとは言えなそうだ。
また、最大30日間の返金保証サービスも提供されているが、やや特殊な条件が課されている点には注意してほしいのだが、詳しくは後述する。
『FXStabilizer』の特徴
『FXStabilizer』は、「マーチンゲール法」と「グリッドトレード」とを掛け合わせたハイブリッドな戦略を搭載している点を最大の特徴としている。
前者は、まごうことなくハイリスク・ハイリターンな投資手法の代名詞だし、後者は後者で厳密なリスク管理が求められるため、かなり尖った個性を持つEAだと言える。
また、このEAには、「Turbo」モードと「Durable」モードという2つの設定が用意されているが、特に前者には、よりハイリスク・ハイリターンなアルゴリズムが採用されている。
上の取引履歴はTurboモードのものだが、「数時間から数日間という短めの間隔で取引を重ね、大きめの利益を狙いにいく」という、デイトレードとスイングトレードの中間に位置するような取引スタイルだということが分かる。
一方で、Durableモードについては、「数日から十数日間というやや長めの間隔で取引を重ね、大きめ利益を狙い撃ちにいく」というスイングトレード的な取引スタイルを基本にしているようだ。
より安全に取引を行いたいなら、あまり難しいことは考えず、素直にDurableモードに設定しておくべきだろう。
そして、この勢いのまま『FXStabilizer』のさらなる特徴の説明に続いていきたいところなのだが、残念ながら公式サイト上で明らかにされている情報の量は、悲しくなるほどに少ない。
そもそもどんな戦略が搭載されているかすら明記されておらず、その “正体” が、マーチンゲール法とグリッドトレードのハイブリッド戦略だということも、取引履歴のデータなどから判明したことだ。
過剰なまでに聞こえの良い情報ばかり書き連ねているのも怪しいが、必要最低限の情報すら記載されていないのも、間違いなく怪しい。
その割には、「簡単」で「安全」に「利益が上がる」ことについては、繰り返し喧伝しているのだが、絵に描いたような胡散臭さが逆に清々しいくらいだ。
『FXStabilizer』の成績
下の資産曲線は、ハイリスク・ハイリターンの申し子であるTurboモードのもの。まずもって2年間以上も破綻していないことが驚きだが、その成績の優秀さにも度肝を抜かれる。
運用期間を通じた利益は1,500%越えとマーチン系EAらしさを見せつけつつも、最大ドローダウンは13%程度と、マーチン系EAにあるまじき安定感を見せている。
一ヶ月あたりの平均利益率は10%強、通算勝率は約65%、プロフィットファクターも「2.61」と、まさに全方位に隙が無い。
また、赤色と黄色で示された2本の曲線は、それぞれ「確定した残高(証拠金)」と「含み損を差し引いた残高(有効証拠金)」の変動を描いたものだが、両者の開きが狭いほど、安定したシステムだと評価できる。
見れば見るほど、最初から最後まで2本の曲線はほぼ完全に一致し続けていることが分かるが、本当にこれがマーチン系EAを運用している口座の成績なのか、疑わしくなってしまうほどだ。
一方で、Durableモードの資産曲線を見やると、やはりこちらも相当に優秀な成績を収めていることが分かる。
約2年間の運用期間での利益は500%越えを達成しており、一ヶ月あたりの平均利益率は8%弱、最大ドローダウンは24%、通算勝率は約60%、プロフィットファクターも「2.13」と、やはりどこにも隙らしい隙が無い。
より高い安定性を追求したはずのDurableモードの方が、最大ドローダウンが大きかったり、資産曲線に凹凸が見られるのは、マーチン系EAの特性を考えるとにわかに信じがたい部分もある。
しかしながら、Myfxbookにきちんと承認されたデータの信頼性を考えると、少なくとも公式データから見える範囲で言えば、「FXStabilizerは非常に優秀なEAだ」と評価するのが妥当だろう。
『FXStabilizer』の信頼性
さて、個人的な結論から述べると、『FXStabilizer』は、「SCAM(詐欺商材)」である疑いが非常に濃厚だと確信している。
以下はすべて、このEAがSCAMであると結論づけるに至った根拠だ。
多くの運用者が、口座の破綻を訴えている
前述のとおり、公式サイト上に公開されている『FXStabilizer』の成績は、理想的であり、ほとんど完璧に近いと言って差し支えないだろう。
しかし、その一方では、「このEAのおかげでぼろ儲けしました」という報告はほとんど見かけず、むしろ口座が破綻するレベルの大敗を喫したという報告も数多く寄せられており、「理想」と「現実」とが大きく乖離する状況になってしまっている。
上の資産曲線は、FX関連のデータベースとして信頼性に一定の評価を集めるForex Peace Armyが、実際にこのEAを運用したリアル口座の成績をグラフで示したものだが、最終的にこの口座は破綻している。
およそ3年間も大きく崩れることなく右肩上がりの成長を続けていたことは素晴らしいが、破綻する時は一瞬だ。取引履歴を確認すると、破綻の直前にはロット数が「102」にまで膨れ上がっている辺り、やはりマーチンゲール法の抱えるリスクは大きい。
また、Myfxbook上には、他のユーザーによって登録された取引成績も公開されているが、大幅な損失と共に破綻しているものも少なくない。
下の2つの資産曲線は、実際に破綻してしまったリアル口座のものだが、損失の大きさと勢いの凄まじさを垣間見ることができる。
データを見る限りでは、もちろん破綻せずに利益を上げられているユーザーもそれなりにいるようだが、そうなると今度は、明らかに公式の口座だけ成績が良すぎるように思われてくる。
他の口座のほとんどが、せいぜい20~60%程度の利益しか上げられていない中、公式の口座だけが、500~1,500%もの利益を上げている。
Myfxbookに口座情報を公開していないユーザーの方が圧倒的に多いため、あまり断定的な物言いは避けるべきとは思うが、運用期間の違いや諸々の条件の違いなどを考慮に入れても、さすがに落差が酷すぎはしないだろうか。
返金条件に厳しい制限が設けられている
30日間の返金保証を約束している点では、『FXStabilizer』も他の多くのEAと比べても遜色ないが、かなり厳しい制限が設けられている点については、前述のとおり気を付けてほしい。
以下、『FXStabilizer』の公式サイトからの引用。
We provide 30 days full money back gaurantee. If our forex software failed on your account just let us know and we will send you all your money!
"Failed" means you have used recommended settings and our EA had lost more then 50% of deposit.
要約すると、「我々のEAが ”破綻” した場合に限り、30日間以内に連絡してもらえれば、全額の返金保証に応じます」とのことだ。
恐ろしいことに、彼らはこの “破綻” という言葉を、「推奨されている設定に従ってリアル口座で運用した結果、50%以上の証拠金を失った場合」と定義しているが、冷静に考えて、30日間のうちに50%以上もの証拠金を失うというのは、相当な事態だ。
そもそも滅多にそんな事態には陥らないことを前提に、「返金保証に応じないための方便」として振りかざしているのならば、それはそれでもちろん問題だが、まだしも救いようがある。
本当に恐ろしいのは、彼らが「ごく短期間のうちに、半分以上の証拠金を失う危険性が高い」ことを認識した上で、この返金条件を設定していた場合だ。もしそうならば、相当に悪質だと言わざるを得ない。
証拠金を半ば以上も失ってからEAの購入代金だけが全額返金されたところで、かえって神経を逆撫でされるだけのような気もするが、焼け石にだって水を掛けないよりかはマシかもしれない。
なお、実際に、上記の理由以外で返金対応を申請したユーザーは、返金を断られている。その詳細については、次に述べたい。
セキュリティソフトに「マルウェア」と認識されたとの報告がある
とあるユーザーから寄せられた報告によると、「購入した『FXStabilizer』をPCにインストールしようとしたところ、Windows OSの標準セキュリティソフト「Windows Defender」によって、このEAがマルウェア(悪意のある不正ソフトウェア)として検出された」とのことだ。
ソフトウェアを自動的に消去しようとするWindows Defenderの目を掻い潜り、何とかインストールに成功したものの、2週間後には定期スキャンによって再び検出されてしまい、最終的にやはり自動的に消去されてしまったらしい。
彼とは別に、もう一人のユーザーが同様の症状を訴えているが、やはり単なる誤検知である可能性についても、まずは考慮されてしかるべきだろう。
とはいうものの、「EAがマルウェア検知に引っ掛かった」という報告を、他のEA製品のレビューで見かけたためしがない。
“friendly support(親切な対応)” とかけ離れた顧客対応
そうして、ついにこのEAの運用を諦めた彼は、返金してもらおうと公式サポートに連絡を取ったものの、「そんなことは起こりえない」と訴えを一蹴されて、返金の要請にまったく取り合ってもらえなかったことを訴えている。
なお、少し調べただけでも、ユーザーからの否定的な意見に対しては、相手を煽るように挑発的な対応をしている公式サポートの様子を確認することができるが、およそ “friendly support(親切な対応)” だとは言い難い。
これを親切な振る舞いだと思っているというならば、彼らにはいつまでも不親切で無愛想であり続けていただきたい。
また、このEAは、商品の販売プラットフォームにAvangateという会社を利用しているが、調べてみると、このAvangateの評判もすこぶる悪い。
このユーザーも、公式サポートに返金を断られた後、Avangateに事情を説明して返金申請をしたが、まともに相手にされなかったとのこと。曰く、後日クレジットカード会社に申請したことで、ようやく無事に返金してもらえる運びとなったようだ。
同じ開発会社が、似たようなEAを多数販売している
前述したように、『FXStabilizer』はいわゆる “マーチン系” に属するEAだが、このEAを開発する会社によって、既に10個を超えるマーチン系EAが販売されているようだ。
以下、有志による調査で浮上した、同一の会社による開発が疑われているEAの一覧。
- FXStabilizer
- FXCharge
- FX Secret
- FXMower
- FXDiverse
- FXTurbine
- FXOxygen
- FXBringer
- Forex Spectre
- ForexSeven
- FX-SEER
- Forex inControl
- PowerfulForex
上から3つに関しては、既に同じ会社による販売が確定しているが、関連が疑われた『FXMower』の公式サポートは、疑惑を明確に否定している。ただし、各EAが公開している利用条件と免責事項に目を通せば通すほど、疑いは深まる。
特に、表現や文言に多少の違いは見られるものの、もれなくほぼすべてのEAが、前述の内容とほとんど同様の返金条件を設定している点は、実に疑わしい。また、文章のレイアウトが良く似ていたり、中にはほぼ完全に使い回されているものもあった。
同一、あるいは同様のアルゴリズムを採用するEAを、名前だけ変えて何度も “新発売” している可能性は高そうだ。
別にそれ自体は違法でも何でもないことだが、製品や販売会社への信頼性を語る上では、非常に大きな減点要素に違いない。
『FXStabilizer』の総評
『Forex Cyborg』を検証した時の結論と被ってしまうが、最も問題視すべきは、公式に発表されている成績の良さと、実際にユーザーから報告されている成績の悪さとの乖離の大きさだ。
もちろん、それ以外の不審な点についても憂慮されるべきだが、結局はEAなどというものは、「成績こそがすべてだ」とも言える訳で、何よりも追及されるべきは、やはり「本当に勝てるか勝てないか」の一点に集約されるだろう。
「ギャンブルをしたい」という人の決断を引き留めるつもりは毛頭ないが、とはいえ「堅実に投資をしたい」というならば、この『FXStabilizer』を選択肢に入れることは避けた方が賢明だろう。
少なくとも私はまだまだ元気に投資の世界に身を置きたいので、カジュアルな自殺行為に勤しむつもりはない。
それにしても、軽く調べただけ黄色信号が灯り、掘れば掘るだけ出てくる疑惑のせいで既に赤信号はほぼ確定的なはずなのに、表面上は青信号が点灯しているように見えるから、この『FXStabilizer』は実に性質が悪い。
見せかけの青信号に騙されて交通事故に巻き込まれ、儚く命を散らしてきた多くのトレーダーたちへの手向けの花として、このレビューを捧げたいと思う。
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