FXコラム

「MT4」と「MT5」では何が違う? 選び方について徹底解説【保存版】

FX取引プラットフォームの “決定版” ――「MT4」

『MT4とMT5が存在するが、どちらを使用した方が良いか分からない』という悩める声は、当サイトの開設以降、散発的に寄せられ続けてきたのだが、何故かここ最近、その頻度は緩やかな増加傾向にある。

そこで今回、「MT4」と「MT5」との相違点について情報を整理し、いわゆる “まとめ記事” として提供することとした。

 

これから新たに取引を始めようとしている初心者や、「MT5」に興味のある経験者をはじめ、利用する取引プラットフォームを決定する際の一助としてもらえれば幸いだ。

 

 

 

普及の遅れる “次世代プラットフォーム” ――「MT5」

そもそも「MetaTrader 5(MT5)」とは、その名称が示す通りに「MetaTrader 4(MT4)」の後を継ぐ存在として開発された取引プラットフォームなのだが、実はその登場は、2011年にまで遡る。

“次世代プラットフォーム” として鳴り物入りで登場したにもかかわらず、2020年を目前に控えた現在に至っても、2005年にリリースされた “旧世代” の「MT4」から主流の座を奪えていないのが、開発元であるMetaQuotes社の思惑とは裏腹の現状だ。

 

実際、「後継」として開発されているだけあって、「MT5」においては、様々な面において「MT4」からの改善や強化が施されており、取引プラットフォームとしては、確実に進化していると言えるだろう。

では何故、長らく “世代交代” が滞っているかと言えば、「MT5」が、その進化の過程において、「MT4」からのスムーズな移行を妨げる特徴をも同時に獲得してしまったからに他ならない。

 

ここからは、「MT4」と「MT5」との間に見られる主な相違点について、確認していきたいと思う。

 

 

設計の根幹から異なる「MT4」と「MT5」

何事にも裏と表があるように、当然のことながら「MT5」を使用する上でも、メリットとデメリットというものは存在する。

さらに言うと、単純に数だけを比較するならば、「MT5」を使用することのメリットの方が多いくらいなのだが、その数少ないデメリットが、多くのトレーダーにとって “致命的な欠点” となってしまいがちなことが、「MT5」の普及に著しく歯止めを掛けている最大の原因だと言えるだろう。

 

ここでは、「MT5」を使用する上での「メリット」あるいは「デメリット」だと一般的に認識されている要素について、情報を列挙していきたい。

 

×「MT5」を使用するデメリット ×

その1:プログラミング言語が刷新された

「MT4」から「MT5」へと世代が進んだことによってもたらされた最大の変化は、開発に用いられるプログラミング言語が、「MQL4」から「MQL5」へと刷新された点にあると言っても差支えはない。

とは言うものの、厳密に言えば、プログラミング言語が刷新されたこと自体は、将来的な開発における拡張性などの観点から見ても、決して純粋な「デメリット」だとは言えないだろう。

 

しかしながら、この変更に付随して生じた “とある問題点” が、多くのトレーダーにとって “致命的な欠点” となってしまっているという現状状があるため、この変更点までもがデメリットとして捉えられてしまっているという寸法だ。

そのため、将来的に「MT5」の普及が進めば、「MQL5を採用している」という事実も、後述の理由から「メリットに変わる」とは言わないまでも、「デメリットのように扱われなくなる」ことだろう。

 

なお、開発者の目線から言えば、「MQL4」では利用できていた一部の変数が「MQL5」では利用できなくなったため、大なり小なり知識をアップデートする必要に迫られることにもなるのだが、これについてもデメリットだと言えばそうかもしれない。

 

その2:「MT4」向けに開発されたEAやインジケーターを使用できない

上述の “とある問題点” とは、ずばり「MT4向けに開発されたEAやカスタムインジケーターを使用できない」という「MT5」の特徴のことであり、「MT4との後方互換性を有していない」という仕様のことだ、とも言い換えられる。

つまり、プログラミング言語が「MQL5」へと刷新されたことにより、「MQL4」で開発された「MT4向けのソフトウェア類」は、そのままでは一切の使用が不可能になってしまった訳だ。

 

確かに、以前に比べると遥かに数を増やしてきているとは言え、未だ「MT5向けに開発されたEAやカスタムインジケーター」の絶対数は少なく、「MT5へと移行することで使えなくなってしまうソフトウェア類」の数の方が、まだまだ圧倒的に多いと言えるだろう。

また、業界全体の風潮としては “MT4最優先” の流れが続いており、「MT5」向けにEAやカスタムインジケーターがリリースされていたとしても、“MT4版を提供するついで” といった感が、ありありと溢れ出ている場合も珍しくはない。

 

この現状を前にすれば、精力的に様々なEAを運用したいシステムトレーダーや、豊富なカスタムインジケーターを駆使して取引したい裁量トレーダーが、「MT5」への移行を躊躇するのも無理からぬことだと言えるだろう。

もちろん、長い目で見れば将来的に「MT5」が主流となることは規定路線だと言えるだろうが、「いずれ登場するかもしれない未知の有力なツールを、MT5では利用できない可能性が高い」という状況が続く限り、その普及が急激に進むことはないと思われる。

 

とは言うものの、前述したように「MT5」に対応するEAやカスタムインジケーターは、時間をかけて着実にその数を増やしつつあり、かつて量と質の両面において存在していた決定的な差が、徐々に縮まりつつあることもまた一つの揺るぎない事実だ。

プラットフォームとしての総合的な実力は「MT5」の方に分がある以上、将来的にその差が埋まるか逆転するかしてしまえば、敢えて「MT4」に固執する理由は失われ、“次世代プラットフォーム” への移行も一息に進むこととなるだろう。

 

 

その3:「MT5」に対応するFX会社の数が少ない

これも「直接的なデメリット」というよりは、上述の状況に付随して発生した “余波” のようなものだと言えるが、そもそも「MT5」を提供しているFX会社の数は、登場から八年ほど経過して今でもあまり多くはない

それでもここ数年の間に、海外FX会社を中心として徐々に広がりを見せ始めているのだが、国内FX会社に関して言えば、普及状況は壊滅的だと言わざるを得ない。

 

日本市場向けにビジネスを展開している一部の海外FX会社を利用することで、国内でも「MT5」を運用することは可能だが、純粋な意味で「MT5を提供している国内FX会社」は、本稿の作成時点では、ただの一社も存在していない

それ以前の問題として、国内FX会社の多くは、独自の取引プラットフォームで顧客を囲い込みたがる習性を未だに根強く抱えており、如何にも “ガラパゴス化” の好きな日本らしい状況が続いている。

 

現状を見る限りでは、国内FX会社の間で「MT5」が普及するのは、まだ遥か未来のこととなりそうだ。

 

 

○「MT5」を使用するメリット ○

その1:全体的に動作が軽快になった

「MT5」においてもたらされた改善点の一つに、「動作全般の処理が高速化された」ということが挙げられる。

その反面、機能性が大幅に拡張されたことなどに伴い、「MT5」は「MT4」よりも多くのメモリを消費するようにもなったのだが、消費リソースの増大と広範な最適化の結果として、晴れて全体的な処理の高速化も果たされることとなった訳だ。

 

なお、「MT5」が登場した八年前の頃であれば、確かに「メモリ消費量の増加」は、大なり小なりのデメリットともなり得ただろうが、日進月歩の進化を続けるコンピューターの世界では、既にほとんどの場合において、その影響は全くないに等しいと言える。

現時点で「MT4」を快適に動作させられる環境であれば、何の問題もなく「MT5」も稼働させられるだろうし、むしろ種々の処理が最適化されて全体的に動作が軽快になった分、より快適な取引を堪能できることだろう。

 

ただし、リソースにあまり余裕のない一台のVPS(またはPC)上で、幾つもの「MT5」を同時に稼働させた場合には、「塵も積もれば山となる」の原理でメモリ消費が圧迫され、動作全般が重くなったり、あるいは予期せぬ不具合が発生したりする可能性も否定しきれない

限られたリソース内で可能な限り多くの台数を同時に立ち上げたいならば、より消費リソースの少ない「MT4」の方に軍配が上がることだろう。

 

ちなみに、ここで言う “高速化される動作” の中には、当然ポジションの「エントリー」および「決済」に関する処理も含まれている

 

そのごく僅かな処理速度の差が、取引の明暗を大きく分けるような事態にはそうそう見舞われないだろうが、処理の実行から完了までが一瞬でも短くあるに越したことはないはずだ。

誰であれそれは同じことだろうが、特に「秒スキャルピング」など、“一分一秒のずれが勝敗そのものにも関わってくるような取引手法” を行う人にとっては、その僅差も十分に追及する価値があると言えるだろう。

 

その2:UI全体が改良され、視認性と操作性が改善された

「MT5」においては、「UI(ユーザーインターフェース)」にも全体的な改善が施されることとなった。

 

各種アイコンは、より大きく見やすいデザインへと変更されたほか、「気配値」ウィンドウには新たな操作タブが追加され、「ナビゲーター」ウィンドウのUIにも改良が加えられている。

また、その見づらさと使いにくさで悪名を轟かせていた「通貨ペアリスト」も、「MT5」において「銘柄」と名を改めて生まれ変わり、視認性と操作性を劇的に改善。検索機能も追加されたことで、お目当ての通貨ペアを簡単に見つけることが可能になった。

 

 

一方で、基本的なデザインや機能については、そのまま「MT4」のものを踏襲しているため、その変化は決して大きなものではない。

しかしながら、使用者に配慮されたアプローチにより、従来からの操作性を全く損なわせることなく、全体的な使用感を着実に向上させることに成功していると言えるだろう。

 

全体的に地味ではあるが、どれも地味に嬉しい改善点ばかりだと言える。

 

その3:「ナビゲーター」ウィンドウの利便性が向上した

すぐ上で述べた通り、「MT5」においては「ナビゲーター」ウィンドウのUIにも、視認性と利便性を向上させる改善がもたらされた。

「MT4」では、「Examples」の直下に大量のインジケーターが表示されていたせいで、雑然とした印象の強いインタフェースとなっていたが、「MT5」においては、すべて「Exaples」フォルダ内に格納されたために、非常にすっきりとした見た目へと進化を遂げている。

 

また、これまで作成したインジケーターは、すべて既存のフォルダ内に保存しなくてはならなかったが、新たに任意のフォルダを追加することが可能になった

それにより、従来よりもインジケーターの管理が容易になった点も、“地味に嬉しい改善点” の一つだと言えるだろう。

 

その4:「気配値表示」ウィンドウの機能性が強化された


新たに追加された「プライスボード」タブ(左)と「詳細」タブ(右)

そして、「MT5」の「気配値表示」ウィンドウには、新たに「プライスボード」および「詳細」タブが追加されている。

 

「プライスボード」タブ上からは、各通貨ペアの相場状況をリアルタイムで確認することができるほか、それぞれの通貨ペアについて、いわゆる「ワンクリック注文」を実行することが可能だ。

また、「詳細」タブからは、選択した通貨ペアの値動きについて、文字通り詳細な情報も確認できる

 

なお、プライスボード上に表示される通貨ペアのパネルは、「銘柄」タブに表示されている通貨ペアと連動しているため、任意のパネルだけを表示させたり、パネルの並び順を変更したりしたい場合には、「銘柄」タブから設定できることを覚えておくと良いだろう。

ちなみに、どちらの機能も、国内FX会社の提供する独自の取引プラットフォームにおいては、ごく一般的な機能だと言えるが、これまでに一度も「MT4」を利用したことがない人にとっては、「MT5」の方が取っ付きやすく感じられるかもしれない

 

その5:選択できる時間足の数が大幅に増加した

新たに「12種類」もの時間足が追加

ある意味では、これが「MT5を使用する最大のメリット」の一つとも言えるのだが、「MT5」においては、チャートに設定可能な「時間足」の種類が大幅に追加された。

数字上での変化で言えば、「MT4」では「9種類」しか用意されていなかったところが、「MT5」においては、実に「21種類」もの時間足を選択することが可能になっている。

 

MT4 MT5
1分足
2分足
3分足
4分足
5分足
6分足
10分足
12分足
15分足
20分足
30分足
1時間足
2時間足
3時間足
4時間足
6時間足
8時間足
12時間足
日足
週足
月足

 

この改良のおかげで、従来よりも緻密にチャートを分析することが可能になったことは、特にチャートの詳細な読み込みに基づくテクニカル分析を武器に闘う裁量トレーダーにとっては、間違いなく朗報だと言えるだろう。

もちろん、「MT4」に存在していなかった時間足を使うことが、そのまま取引での勝利に直結するということはないし、自動売買を主戦場とするシステムトレーダーには、そもそも恩恵の薄い話かもしれない。

 

とは言え、「手元に存在しないから、使うことができない」のと、「使うことのできる環境は整っているが、敢えて使わない選択もできる」のとでは、トレーダーにとっての意味合いに天と地ほどの開きがあると言えるだろう。

 

その6:標準インジケーターや描画オブジェクトが追加された

「MT5」へと進化する過程では、プリインストールされている「標準インジケーター」と「描画オブジェクト」についても大きく強化されており、上述した「時間足の追加」も相まって、より「テクニカル分析」に強いプラットフォームへと成長を遂げた。

具体的な数字で言えば、標準インジケーターは「30種類」から「38種類」に、描画オブジェクトについては「31種類」から「44種類」にまで、“品揃え” が改善されている。

 

◇「標準インジケーター」一覧表

トレンド系 MT4 MT5
Adaptive Moving Average
Average Directional Movement Index
Average Directional Movement Index Wider
Bolinger Bands
Double Exponential Movement Average
Envelopes
Fractal Adaptive Moving Average
Ichimoku Kinko Hyo
Moving Average
Parabolic SAR
Standard Deviation
Triple Exponential Moving Average
Variable Index Dynamic Average
オシレーター MT4 MT5
Average True Range
Bears Power
Bulls Power
Chaikin Oscillator
Commodity Channel Index
DeMarker
Force Index
MACD
Momentum
Moving Average of Oscillator
Relative Strength Index
Relative Vigor Index
Stochastic Oscillator
Triple Exponential Average
Williams' Percent Range
ボリューム系 MT4 MT5
Accumulation/Distribution
Money Flow Index
On Balance Volume
Volumes
ビル・ウィリアムス系 MT4 MT5
Accelerator Oscillator
Alligator
Awesome Oscillator
Fractals
Gator Oscillator
Market Facilitation Index

 

また、上掲の表は、「MT5」に標準で搭載されているインジケーターの一覧表だ。新たに追加された「8種類」の標準インジケーターは、すべて「トレンド系」と「オシレーター」に集中していることが見て取れる。

その内訳としては、トレンド系だけで「6種類」を占めている訳だが、トレンド系が最も主流に近いインジケーターの系統であることを思えば、貧弱だった「MT4」時代のラインナップに、大規模なてこ入れが行われたことにも納得が行くことだろう。

 

◇「描画オブジェクト」一覧表

ライン MT4 MT5
垂直線
水平線
トレンドライン
アンクルトレンド
サイクルライン
矢印線
チャネル MT4 MT5
平行チャネル
標準偏差チャンネル
回帰チャンネル
アンドリューピッチフォーク
ギャン MT4 MT5
ギャンライン
ギャンファン
ギャングリッド
フィボナッチ係数 MT4 MT5
フィボナッチリトレースメント
フィボナッチタイムゾーン
フィボナッチファン
フィボナッチアーク
フィボナッチチャンネル
フィボナッチエクスパンション
エリオット波動 MT4 MT5
エリオット推進波
エリオット修正波
図形 MT4 MT5
長方形
三角形
楕円形
矢印 MT4 MT5
サムズアップ
サムズダウン
上向き矢印
下向き矢印
ストップサイン
チェックサイン
左プライスラベル
右プライスラベル
買いサイン
売りサイン
矢印
グラフィック MT4 MT5
テキスト
ラベル
ボタン
チャート
ビットマップ
ビットマップレベル
編集
イベント
長方形ラベル

 

一方でこちらの表は、「MT5」に実装されている描画オブジェクトをすべて書き出したものとなるが、「MT4」からの最大の変更点としては、「エリオット波動」に関する項目と描画オブジェクトが新規に追加されたことが挙げられる。

また、以前は「挿入」メニュー直下に配置されていた「テキスト」および「(テキスト)ラベル」についても、新設された「グラフィック」という項目内に、多数の新規オブジェクトと共に格納されることとなった。

 

新たに追加された多数のインジケーターと描画オブジェクトを活用することで、従来よりもグラフィカルにチャートの分析が可能になったため、チャート上で目まぐるしく変化する情報をより視覚的に捉えやすくなり、より精確かつ迅速に判断を下せることだろう。

なお、上記の情報は、すべて本稿の作成時点におけるものであるため、今後のアップデートによっては、さらに「MT5」側のラインナップも充実することになるかもしれない。

 

その7:ストラテジーテスター機能が大きく強化された

上述した機能面での拡充は、どちらかと言えば裁量トレードを好んで行う人にとって好ましい改良だったと言えるが、「MT5」においては、EAを駆使するシステムトレーダーのみならず、EAの開発者をも喜ばせる新機能までもが、抜かりなく実装されている。

 

「ストラテジーテスター」機能は大幅に強化され、バックテストの結果をより詳細に分析することが可能になったほか、新たにフォワードテストを実行する機能も追加されており、「分析ツール」として一つ高みに登った印象さえ覚えることだろう。

まず、バックテスト機能においては、テスト結果の評価項目が追加されたり、既存の評価項目がより細分化されたりしており、従来よりも高度で緻密な分析を行うことが可能になっている。

 

主な新規項目 意味
残高絶対ドローダウン 初期残高からの最大損失額
残高最大ドローダウン 残高に対する最大損失の金額
残高相対ドローダウン 残高に対する最大損失の割合
証拠金絶対ドローダウン 初期有効証拠金からの最大損失額
証拠金最大ドローダウン 有効証拠金に対する最大損失の金額
証拠金相対ドローダウン 有効証拠金に対する最大損失の割合
リカバリファクター 最大ドローダウンに対する純利益の比率
AHPR 取引一回あたりの算術平均による利益率
GHPR 取引一回あたりの幾何平均による利益率
シャープレシオ リスクの大きさに対するリターンの大きさの割合
LR Correlation 回帰直線との相関性(損益の安定性を測る指標の一つ)
LR Standard Error 回帰直線の平均誤差(損益の安定性を測る指標の一つ)
証拠金維持率 必要証拠金に対する余剰証拠金の割合
Z-Score 取引において連勝できる確率の程度を示す指標
OnTester 結果 バックテスト時に適用された「OnTester」関数からの戻り値

 

また、新たに「バックテスト時の最適化におけるマルチスレッド処理」への対応を果たしたことも、「MT5」における大きな進化点の一つに数えられるだろう。

 

最適化は、バックテスト実行時において最も時間の掛かる処理の代表例だと言えるが、残念ながら「MT4」では、どれだけコア数の多いCPUを搭載する環境で稼働させていようとも、その処理にはたった一つのCPUコアしか使用することができなかった

しかしながら、新たに「MT5」では、最適化の際に二つ以上のCPUコアが自動的に有効化されるように改善されたため、処理の実行効率が劇的に向上

 

要するに、「最初から最後まですべて独りで作業をこなさなければならなかった状態から、何名もの同僚と分担しながら同時に作業をこなせるようになった」ことで、従来よりも遥かに短い時間でバックテストを実施することが可能になったという訳だ。

 

バックテスト結果の確認画面に追加されたグラフの数々

 

さらに、バックテスト結果の確認画面には、各種のグラフや分布図も追加。各期間ごとの損益といった一般的な情報から、「MFE(最大順行幅)」と「MAE(最大逆行幅)」との相関性などの専門的な情報まで、様々な情報を視覚的に把握できるよう改善されている。

そこまで高度な分析を求めるトレーダーもそう多くはないだろうが、「MT5」上でより緻密な分析が可能になることは、わざわざ別の分析ツールを併用する手間を省けることにも繋がるため、少しでも詳細な情報を求める開発者にとっては有用な改良だと言えるだろう。

 

 

そして、前述した通り「MT5」には、新たにフォワードテスト機能が実装されることとなった訳だが、より正確には、「バックテスト機能を活用した “疑似的なフォワードテスト” を実行することが可能になった」と言える。

 

通常、フォワードテストという言葉は、「実際に口座上で運用しながら検証を行う」行為のことを指すが、「MT5」上で実行されるフォワードテストは、バックテストと同様に過去相場のヒストリカルデータを利用して実行される

また、その実行方法の仕組みも、「バックテストの実行期間を任意の割合で二分割し、前半の期間でバックテストおよび最適化を実行し、後半の期間において、その最適化によって得られたパラメーターを適用した上で、もう一度最初からバックテストを実行する」というものだ。

 

 

そのため、厳密にはフォワードテストとは呼ぶべきではないのかもしれないが、「バックテストで得られたパラメーターの有効性を、実際の相場上で検証している」という意味では、“疑似的” にフォワードテストを実行しているとも言えるだろう。

ちなみに、「MT5」上でフォワードテストを実行できる利点としては、主に以下の二つが挙げられる。

 

  • 「カーブフィッティング(過剰な最適化)」の防止
  • 検証にかかる手間と時間の削減

 

バックテストを利用したパラメーターの最適化は、EA運用において非常に有用な作業だと言えるが、過去の相場への過剰な最適化の反動で、実際の相場上では全く成績が振るわなくなってしまう「カーブフィッティング」は、まさにバックテストにおける “負の側面” だと言える。

 

このカーブフィッティングは、ヒストリカルデータの全期間で最適化を行った際に陥りやすいのだが、「MT5」のフォワードテストでは、特定の期間においてのみ最適化を実行するため、過去の相場に最適化されすぎにくくなるという寸法だ。

また、この「ヒストリカルデータを任意の期間で分割する」という仕様の存在は、つい思わずヒストリカルデータの全期間での最適化を追求したくなってしまいがちな人にとって、優秀な “抑止力” として働くことにも期待できるだろう。

 

そして、バックテストと地続きでフォワードテストを実行できることは、検証にかかる時間と労力を省くことにも繋がる

 

前述したように、「MT5」におけるフォワードテストとは、要するに「都度パラメーターを変更しつつ、連続してバックテストを行う」ことだと言える訳だからして、手間と時間さえ惜しまなければ、「MT4」でも全く同じことは再現可能だ。

ただし、そのためには、「MT5」よりも格段に実行効率の悪い最適化を行ってから、得られたパラメーターを手動で入力し、さらに実行期間の再指定や最適化処理の無効化など、細かな設定の変更をした上で、もう一度バックテストを実行しなくてはならない。

 

一度や二度なら大した手間とも感じないだろうが、回数が増えていくにつれて、付きまとう煩わしさも加速度的に増していくことは、容易に想像できる。

一部の料理のように「手間を掛けるほどに美味しくなる」という訳でもないのだから、“省エネ” や “時短” で済ませられるに越したことはないだろう。

 

その8:仮想通貨の取引への対応を果たした

ここで再び、「取引プラットフォーム」として強化された要素に話を引き戻したいのだが、「MT5」においては、新たに仮想通貨を取引することが可能になった。

裁量取引については言うまでもなく、まだ数は少ないものの仮想通貨の取引に特化したEAなども登場し始めており、自動売買による取引の間口も徐々に広がりつつある

 

なお、一時期の巷を熱狂させた仮想通貨ブームも既に最盛期を過ぎており、ビットコインの暴落や、相次いだ仮想通貨の大量流出などを契機として、業界全体がやや下火になりつつある印象は拭い切れない。

しかしながら、それでも投資対象としての仮想通貨は、未だに十分に魅力的な存在だと言うことに変わりはない

 

新たに対応を果たしたことで、「MT5」は仮想通貨の取引を視野に入れているトレーダーにとって、移行を真剣に検討する価値のあるプラットフォームへと昇華したと言えるだろう。

 

その9:実行可能な注文方法が追加された

また、「MT5」では、注文方法に関する機能も強化されており、従来よりも柔軟性のある注文管理を行うことが可能にされている。

以下は、「MT5」で実行可能な注文方法の一覧。

 

注文方法 MT4 MT5
成行注文
Buy Limit(買い指値注文)
Sell Limit(売り指値注文)
Buy Stop(買い逆指値注文)
Sell Stop(売り逆指値注文)
Buy Stop Limit(買いストップリミット注文)
Sell Stop Limit(売りストップリミット注文)

 

「成行注文」「指値注文」および「逆指値注文」を実行できる点は、「MT4」をそのまま踏襲しているのだが、「MT5」においては、新たに「IFD(イフダン)注文」の一種である「ストップリミット注文」も選択することが可能になった。

これにより、「MT4」では実現不可能だった高度で柔軟な逆指値注文を入れられるようになった点は、純粋に “MT5ならではの強み” だと言える。

 

ストップリミット注文について

「ストップリミット注文」とは、その名の通り「ストップ注文(逆指値注文)」と「リミット注文(指値注文)」の特性を併せ持つ仕組みの注文方法であり、「IFD注文」の一種。

逆指値注文においては、相場が指定した価格に達すると「成行注文」が発注されることになるが、ストップリミット注文の場合、発注されるのは「指値注文」となる。


また、ストップリミット注文においては、「指定した売買価格またはそれよりも不利な価格で約定される」ことになるが、実行条件をクリアした後に発注されるのが、成行注文ではなく指値注文であることから、しばしば値動きによっては約定にまで至らないことがある点には要注意。

 

なお、ストップリミット注文は、最終的な約定に至るまでの条件がやや複雑なこともあり、適切に使いこなすにはそれなりの経験が必要となるが、上手く活用できれば、取引のチャンスは大きく広がることだろう。

 

その10:定期的なアップデートが実施されている

これを「MT5の長所」と言うべきか、はたまた「MT4の短所」と言うべきかは非常に迷うところだが、とにかく「MT5」に対しては、現在も開発元のMetaQuotes社によって精力的にアップデートが提供され続けている

対する「MT4」に関しては、数年前からアップデート実施の頻度が目に見えて落ち始めており、もはや今年に至っては、既に一年も半分を過ぎ去っているにもかかわらず、ただの一度さえもアップデートが提供されていない

 

そういった近年の状況を見る限りでは、MetaQuotes社から公式に宣言された訳ではないが、同社による「MT4」の開発は、既に実質的に終了していると考えておいた方が良さそうだ。

もはや同社の公式サイト上から、「MT4」をダウンロードすることができなくなっていることからも、そのことは明らかだと言えるだろう。

 

実際にこのリンクからダウンロードされるのは「MetaTrader 5」

 

「PC版MetaTrader 4をダウンロードし、デモ口座を開設する」と書かれたボタンをクリックしても、実際にダウンロードされるのは「MetaTrader 5」という徹底ぶりに、「MT5への普世代交代を推し進めたい」という同社の切なる願いが見て取れるというものだ。

いずれにせよ、一つのプラットフォームとして未来が明るいのは間違いなく「MT5」の方であり、少なくともまだ見ぬ遠い未来に「MetaTrader 6(MT6)」が登場するまでは、断続的なアップデートによる機能の追加や改善にも期待できることだろう。

 

 

まとめ

ここまで読み進めてくれたならば、仕様上の変更点をはじめ、それぞれの抱えるメリットとデメリットなど、「MT4」と「MT5」の違いについて十分に理解を深めてもらえたことだと思う。

以下に、「MT4」と「MT5」のどちらを使用するかを選ぶ際の目安を示すことで、最後の “おさらい” としたい。

「MT4」の方が適している人

  • EAによる自動売買を行いたい人
  • 「MT5」には提供されていないEAやカスタムインジケーターを利用したい人
  • リソースの限られた取引環境で、なるべく多くの「MT4」を同時に運用したい人

やはり何と言っても、「MT4」を使用する上での最大の利点は、「EAやカスタムインジケーターなど、有償無償を問わずに提供される膨大な数と種類のソフトウェア資産を、十全に活用できる」という一点に尽きる。

 

逆に言えば、それぐらいしか「MT5」に対する明確な優位性は思い浮かばないのだが、その優位性が、多くのトレーダーにとってあまりにも絶対的であるために、まだまだ「MT4」は現役で在り続けることだろう。

あるいは、「あまりスペックの高くないPCやVPS上で、可能な限り多くの「MT4」を同時に稼働させたい」という限定的な状況においても「MT5」の優位に立てるだろうが、リソースの限界を攻めるような運用方法は、あらゆる尺度から評価しても決しておすすめはできない。

 

何にせよ、EA運用による自動売買を自らの主戦場とするならば、現時点においては「MT4」こそが、実質的にほぼ唯一の “現実的な選択肢” だと言っても過言ではないだろう。

 

「MT5」の方が適している人

  • 裁量トレードをメインで行う人
  • 標準搭載の機能を駆使して、より緻密なチャート分析を行いたい人
  • 仮想通貨を取引したい人
  • 「秒スキャ」のような超短期取引を行う人

一方、これから新たに裁量トレードによる取引を始めようと思っているならば、「MT5」は有力な選択肢となり得ることだろう。

特にあまり金銭的に余裕のない場合や、何から手を付けて良いかさえ分からないような初心者の場合などには、標準インジケーターやストラテジーテスター機能をはじめ、基本的な機能性や利便性が充実している「MT5」は、心強い相棒となってくれるはずだ。

 

また、仮想通貨を取引したい場合には、好むと好まざるとに「MT5」を選ぶしかないほか、約定や決済といった処理にかかる時間の僅かな差が、損益に直結しかねないような超短期取引を主戦場とする場合にも、「MT5」の方が有利になることも多いかもしれない

ちなみに、確かに「ストラテジーテスター」機能も随分と優秀にはなったが、「Quant Analyzer」のように便利な分析ツールが無償で簡単に利用できることを思うと、わざわざそれだけを目的とするには、ちょっと “弱い” と言えるだろう。

 

結局のところ、投資に対する目的や考え方、自身の取引スタイルなどを十分に考慮した上で、より自分に適した取引プラットフォームを選択するしかないのだが、その際に少しでも本稿が助けとなったならば、これに勝る喜びはない。

 

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