FXコラム

通貨ペアの「相関関係」とは? 取引を優位に運ぶ通貨ペアの選び方

通貨ペア同士にも「相関関係」が存在する

以前、EA同士にも “相性” と呼ぶべきような相関関係が存在し、その相関性の高低を知ることは、優秀なEAポートフォリオを組む上では、重要な判断基準の一つとなり得ることを解説したが、覚えているだろうか。

その記事中において、「通貨ペア同士にも相関関係が存在する」ということについても軽く触れたが、今回は、そのことに関してもう少し深く掘り下げていくことにしたい。

 

当サイトの開設以来、絶えず定期的に届く問い合わせの中でも “ド定番” と言える「どの通貨ペアを取引するべきか」という疑問を解消する一助にしてもらえれば幸いだ。

なお、EAポートフォリオの組み方やEA同士の相関性に興味のある方は、以下の記事も併せて読んでほしい。

 

 

そもそも「相関関係」とは何か

「相関関係」という言葉も色々と細かく定義することが可能だが、簡単に一言で言ってしまえば、「一方が変化すると、もう一方もそれに応じて変化を起こすような相互作用を持つ関係」のことだ。

つまり、「Aが大きくなるほど、Bも大きくなる傾向にある」あるいは「Aが小さくなるほど、Bは大きくなる」というような関係性のことだと言える。

 

さらに言えば、一言に相関関係と言っても、「正の相関関係(順相関)」「負の相関関係(逆相関)」とに分かれるのだが、以下はそれぞれの関係における特徴を簡単に示したものだ。

 

正の相関関係(順相関)

  • 「Aが大きくなるほど、Bも大きくなる傾向にある」
  • 「Aが小さくなるほど、Bも小さくなる傾向にある」

互いの変化が「同じような方向性や傾向を示す」ような関係性

 

負の相関関係(逆相関)

  • 「Aが大きくなるほど、Bは小さくなる傾向にある」
  • 「Aが小さくなるほど、Bは大きくなる傾向にある」

互いの変化が「対照的な方向性や傾向を示す」ような関係性

 

そして、この相関関係においても、“関係性の強弱” というものが存在しており、その強弱の度合いを示す際によく用いられる指標の一つが、「相関係数」と呼ばれる指数だ。

相関係数は、「+1.00」から「-1.00」の間で「0.01」ポイント刻みで算出される指数であり、値が「+1.00」に近いほど「強い正の相関性を示す」ことを意味し、反対に「-1.00」に近いほど「強い負の相関性を示す」ことを意味している。

 

 

ちなみに、相関係数は「+100%」から「-100%」の間で示されている場合もよく見られるが、考え方については上述の内容と何ら変わりはないほか、原則的に「+1.00(+100%)」あるいは「-1.00(-100%)」を示す通貨ペアの組み合わせは存在しない。

 

「相関係数」の考え方

  • +1.00(+100%)に近い値を示す ⇒  「正の相関性(順相関性)」が強い
  • -1.00(-100%)に近い値を示す ⇒  「負の相関性(逆相関性)」が強い
  • ±0.00(±0%)に近い値を示す ⇒  「無相関性(相関関係がないこと)」が強い

 

また、相関係数については、国内外を問わず複数のFX会社が公開しているため、少し検索すれば簡単に見つけられるはずなので、自分が最も見やすいと感じたところのものを利用するのが良いだろう。

 

なお、Myfxbook上においても「各通貨ペア間の相関係数」は公開されている

参考資料として、以下に一覧表を掲載しておくので、相関係数とはどのようなものかを実際に目で確認してみるのに役立ててほしい。

 

 

ちなみに、通貨ペア間において上記のような相関関係を示す共通要素と言えば、「値動き」がそれにあたる

通貨ペア同士の相関関係について、「順相関と逆相関のどちらなのか」や「相関性の度合いはどの程度なのか」といったことを把握することで、EAを用いた自動売買においても、優位かつ効率よく取引を行うことができるようになる可能性を高められると言えるだろう。

 

 

通貨ペア間の相関関係を把握するメリット

ここでようやく本題に移ることにしたいが、通貨ペア同士の相関関係を理解することで得られる主なメリットについては、以下の通りだ。

 

1.リスク分散を図りやすくなる

 

2.利益の最大化を狙いやすくなる

 

3.勝率の高い取引を行いやすくなる

 

EAによる自動売買を主戦場とする場合における最大のメリットは、やはり「リスク分散を図りやすくなる」あるいは「利益の最大化を狙いやすくなる」ことのどちらかだろう。

とは言え、実は上記二つのメリットは「表裏一体」の関係にあるため、両メリットが根差す本質は実質的には同一だと言える。

 

要するに、相反する値動きを見せがちな「逆相関性の強い通貨ペア」を同時に運用することで、急激な値動きなどによる損失のリスクを最小限に抑えたり、逆に類似した値動きを見せやすい「順相関性の強い通貨ペア」を同時に運用することで、利益の倍増を狙ったりすることも可能になるという訳だ。

ただし、前者ならば、通貨ペア同士で利益と損失とが相殺され合って最終的な利益を得られなかったり、後者ならば、順相関性の高さが仇となり、被る損失の大きさも倍加してしまったりと、当然この戦略にもデメリットは存在している。

 

リスク分散と収益性との兼ね合いに関しては、「EAポートフォリオ」における相関性に対する考え方と同じだ。

 

 

また、各通貨ペア間の相関関係について理解が深まるにつれて、単一通貨ペアの動向だけでなく、その通貨ペアと相関性の強い通貨ペアの動向も自然と把握できるようになり、ひいては相場全体の動向まで把握しやすくなる点も、メリットの一つに数えられるだろう。

そして、複数通貨ペアの相場あるいは相場全体の動向を把握できるようになると、取引を実行する上での根拠を見出しやすくなるため、取引全体の勝率が高まりやすくなるという副次的な恩恵も得られると言える。

 

しかしながら、基本的にEAは、「特定の通貨ペアを一定期間以上にわたり運用し続けることで成績が最大化される傾向が強い」ため、EAに取引させる通貨ペアを自己判断で小まめに変更してしまうことで、EAが本来の実力を発揮できずに損失が拡大してしまうおそれがある。

そのため、状況に応じて臨機応変な対応の取りやすい裁量取引ならともかく、原則としてすべてプログラム任せの自動売買においては、このメリット上手く活かすことはやや難しいと言えるかもしれない。

 

とは言え、相場の動向を把握できるようになること自体には何のデメリットも存在しない上に、適切に活用できれば利益の増大と損失の抑制を図れるため、「相関関係を覚えておいて損はない」だろう。

 

 

各通貨の間に横たわる「力関係」

ちなみに、取引する通貨ペアを決定する際に取り得る方法としては、「異なる通貨ペア間の相関関係」を参考にする方法以外にも、「単一の通貨ペアにおける強弱関係」を参考にする方法もある。

その方法について詳しく解説する前に、まずは「通貨ペアを取引する」という行為の根本的な原理について説明しておきたい。

 

「ユーロ/米ドル(EURUSD)」や「米ドル/円(USDJPY)」などは、世界的に見ても最も流通量の多い通貨ペアの代表格だと言えるが、「/」の前に置かれた通貨のことを「基軸通貨」と言い、後に置かれた通貨のことを「決済通貨」と呼ぶ

用語に関する知識を幾ら増やしてもあまり意味はないので、ここでは、要するに「基軸通貨『を』決済通貨『で』売買する」ということが、「通貨ペアを売買する」ということの基本的な意味だと理解しておいてもらえれば十分だ。

 

つまり、例えば「ユーロ/米ドル(EURUSD)を買う」ということは、「米ドルを売って、ユーロを買う」ということであり、逆に同通貨ペアを「売る」ということは、「ユーロを売って、米ドルを買う」ということになる。

毎回の取引においては、常に「二つの異なる通貨がそれぞれ反対方向に売買されている」という訳だ。

 

 

以上の前提を踏まえた上で「単一の通貨ペアにおける強弱関係」に話を戻すが、「常に反対方向の売買が行われている」ということは、「常に二つの通貨の価値が交換されている」ということと同義だと言える。

さらに言えば、「通貨の価値」とはすなわち「国力の表れ」とも考えられるため、通貨ペアの取引には、ある意味で「国同士の力比べ」のような側面があるとも言えるだろう。

 

 

この国同士の力比べは、しばしば「綱引き」に例えられることもあるが、これは実に秀逸な例えだと感心させられてしまう。

綱引きになぞらえて言うならば、通貨ペアの取引においては、常に「綱を引く力の強い通貨」と「綱を引く力の弱い通貨」に二分されることになる訳だが、この考え方は、「建てるポジションの方向」を決定する際に、特に役に立つと言える。

 

要するに、「通貨ペアが今後どのような値動きを見せるか」という漠然とした未来を予想するよりも、「力関係のはっきりしている通貨同士による綱引きの勝敗」という明白な未来を予想する方がよほど分かりやすい、という訳だ。

この考え方に基づけば、例えば「綱を引く力の強い通貨」と「綱を引く力の弱い通貨」で構成される通貨ペアを選び、「強い通貨の方を買う」または「弱い通貨の方を売る」という戦略も立てることができるだろう。

 

なお、この「綱を引く力の強弱」の見極め方については幾つか方法が考えられるが、かなり単純な方法として、様々な通貨ペアにおける直近の取引結果を見ることによっても、おおよその状態を測ることが可能だ。

つまり、例えば「米ドル(USD)」の絡んだあらゆる通貨ペアにおいて、すべて「米ドルが買われていた」ならば、その時点における「米ドルの綱を引く力は強い」と言えるし、その逆もまた然りと言える。

 

 

とは言うものの、ここまでくると、もはや「裁量取引」の領域に大きく片足を突っ込んだ行為だとも言えるだろう。

往々にしてEAの開発においては、多種多様な検証を幾度となく繰り返した上で、最も成績の良い通貨ペアが「推奨ペア」として選定されているため、EAによる自動売買においては、ここまでやる必要はないのかもしれない。

 

しかしながら、「考え方を知った上で利用しない」ことと「考え方を知らないから利用できない」とでは、たとえ結果が同じであっても、その本質には雲泥の差があると言える。

実際に実践に取り入れるかどうかは別として、「通貨ペアにおける強弱関係」についても知識として蓄えておいて決して損はないだろう。

 

 

まとめ

ここまでの解説を通じて、「通貨ペア同士の相関関係」を確認する方法やその意義については理解してもらえたと思うが、やはり知識は実践に活かしてこそというものだろう。

しかしながら前述の通り、通貨ペアにおける相関関係や強弱関係を考慮した上で、取引する通貨ペアを決定することは、裁量取引の領域に足を踏み入れた行為だと言えるため、自動売買を実践する多くの人にとっては実践に上手く取り入れることは難しいことだと言える。

 

そこで、最も簡単で単純な実践方法として、「EAポートフォリオの構築における相関性の調査にいち要素として取り入れる」ことを提案したい。

 

 

「QuantAnalyzer」を用いた各EA間における相関性の計測方法については、上掲の記事で説明した通りだが、その計測においては、測定材料として実際のバックテスト結果が用いられる

取引する通貨ペアが異なれば、バックテストの結果も変わり、相関性の計算に関わる要素にも変化が生じるため、EAポートフォリオを構築する際に、より詳細な調査や分析を行うことも可能になるだろう。

 

「いま一つEAの運用成績が振るわない」という場合や、「より優秀なEAポートフォリオを構築したい」という場合などには、通貨ペアの「相関関係」や「強弱関係」に目を向けてみると、思わぬ展開が広がることになるかもしれない。

 

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